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2019-11-16

第29回こまねっと勉強会「乳がんと遺伝の関係~遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)について~」

秋晴れの11月9日(土)毎年恒例のこまねっと勉強会が開催されました。

 

第29回目となる今回のテーマは「乳がんと遺伝の関係~遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)について~」です。

講師は駒込病院乳腺外科医の本田弥生先生です。

残念ながら当日欠席となってしまった方もいらっしゃいましたが、65名の参加者となりました。

当日の講演内容について概略をまとめさせて頂きました。

素人書記なので、少々不足や読みにくい点があるかもしれませんが、お許し下さい。

 

まず、前半は遺伝の総論という観点から、遺伝のイメージについて、著名人親子や動物の親子の写真を用いながらなごやかに始まりました。

親子は似ている。つまり遺伝というのが一般的な遺伝のイメージですが、そこには「遺伝要因」と「環境要因」の2つの要素があります。

・遺伝要因・・・生まれた時から決まっている。

・環境要因・・・後からつけ加えられたもの(一緒にいると似てくる)

 

そして、がんの発症と遺伝の関係においては、それぞれ要因があります。

・環境要因:喫煙、食べ物、ホルモン、感染

・遺伝要因:生まれた時から持っている遺伝子の変異

この中で「遺伝子の変異」ががんに変わると言われている。

 

がんの発症とがん遺伝子について、医学用語に不慣れな私たちにも解りやすいように、お話をして下さいました。

細胞を増殖させようと働く遺伝子があり、そこに変異があると、がんの遺伝子が活性化して増殖させる。車の運転でアクセルを踏み続けるようなイメージだそうです。

変化する経緯としては、

正常な細胞→遺伝子が傷ついた細胞→異常な細胞→がん化した細胞 となります。

がん抑制遺伝子が不活性になると、細胞のがん化となります。

 

続いて、乳がんの現状と原因についてお話頂きました。

現在、2人に1人が生涯で何らかの部位のがんに罹患すると言われている中で、女性の中で乳がんの罹患率が一番多いのが現状だそうです。

例:乳がん 年間94,800人  卵巣がん 年間13,400

 

乳がんのリスク因子については様々な意見がありますが、日本乳癌学会 乳癌診療ガイドラインの資料によると、エビデンスの確実性があるのは肥満のみだそうです。

一般的にイメージされる喫煙や食事については、エビデンスが不確実というのが現状だそうです。

 

その①女性ホルモン

乳がんの発症・増殖には女性ホルモンである「エストロゲン」が関与していますが、

リスク因子としては、初経年齢が早い、出産歴が無い、初産年齢が遅い、閉経年齢が遅いなどがあります。

 

その②肥満と乳がんの発症リスク

エビデンスの確実性がある「肥満」という因子の中で、「閉経後」の肥満がリスクが高いと言われている。

 

その③食品・栄養系

多くの食品・栄養素は因子としてのエビデンスは不十分。

その中で、味噌汁の摂取量が多いと乳がんになりにくいというデータがあり、根拠としては

大豆・イソフラボンの摂取が乳がんの発症リスクを低減させているという見方もある。

ただし、現在治療中の人がイソフラボンを大量に摂取してよいかは不明。

 

その④遺伝性乳がん

乳がん患者全体の5%が遺伝に伴って発症するといわれている。

その多くがBRCA1/2の変異によるもので、その変異が要因となって発症する一連のがんを遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)と呼ぶ。

 

ここで前半が終了し、休憩をはさみ質疑応答の時間を頂きました。

 

そして、後半は遺伝性乳がん卵巣がん症候群(以下「HBOC」と称します。)についてお話頂きました。

 

HBOCは全体の約3~5%で、家族歴については約10%といわれている。

(家族歴:家族に同病者がいること)

ただし、家族歴があっても遺伝性が無いこともあり、逆もある。

 

HBOCの特徴は下記があげられる。

・若手で乳がんを発症

・トリプルネガティブ

・両側または片側に複数の乳がんを発症

・家系内に膵臓がんや前立腺がんを発症した人がいる(家族歴)     

・家系内に乳がんや卵巣がんを発症した人がいる。(家族歴)       

・男性乳がん(全体の1%くらい)

 

もし、親に病気の原因となる遺伝子の変異がある場合、それを子が受け継ぐ可能性は50%と言われており、これを、常染色体優性遺伝というそうです。

そして、いよいよ遺伝子検査についてのお話です。

 

まず、カウンセリングを受けてから検査になります。

駒込病院では2011年より遺伝子検査を実施していますが、2013年はアンジェリーナジョリーさんの影響で、検査を受ける人が多かったそうです。

 

遺伝子検査の方法は血液検査です。

DNAを採取するため末梢血を使用しますが、採血は通常の血液検査と同じように行います。

費用は自費診療のため駒込病院では現在約22~23万円

 

検出されうる遺伝子変異としては

  • 既に乳がん・卵巣がんを引き起こすことが知られている変異
  • 乳がん・卵巣がんを引き起こすと思われるがまだ確定していない変異
  • 臨床的意義の不明な変異
  • 良性変異を考えられているが、まだ確定していない変異
  • 既に報告されている良性変異

 

もし遺伝性乳がんと診断されたら 

  • 予防的乳房切除(リスク低減手術)自費診療 ※駒込病院では対応不可
  • スクリーニング(様々な状況や条件の中から必要なものを選出すること)

自己検診:18歳から月1回

医師による視触診:25歳から6か月に1回

マンモグラフィ・MRI:25歳もしくは家族歴で早い発症年齢に基づいて年に1回

 

もし遺伝性卵巣がんと診断されたら

  • 予防的卵巣卵管切除(リスク低減手術)
  • スクリーニング

35歳または血縁者が卵巣がんと診断された年齢の5~10歳若い年齢から

・経腟超音波検査、腫瘍マーカー検査 6か月に1回

 

<日本で遺伝子検査を受けることの現在の問題点>

〇費用

・自費診療のため高額、カウンセリング10,000~12,000円、遺伝子検査2223万円

 ※2018年より再発乳がんについては保険適応となった。

・要望的リスク低減手術も自費診療

・スクリーニングも原則保険適応は無い

〇遺伝子検査の結果による差別を規制する法律が無い(アメリカでは法律がある。)

 

また、検査を受ける上でのメリット・デメリットについてもお話頂きました。

 

遺伝子検査を受けるメリット

・予防や早期発見のプログラムを立てられる。

・不確実な不安が緩和される。

・原因の遺伝子異常が明確になることで、血縁者で同じ異変がないか調べられる。

・部分切除か全摘かの判断材料に出来る

 

遺伝子検査を受けるデメリット

・精神的ショックを受ける。

・判定が0でも可能性が0ではない。

・子供への罪悪感を覚える。

・生命保険加入への影響

 

検査に先立ち思い浮かべること

・遺伝子陽性と診断されたら、どう反応するか

・家族の誰に話すか

・気分が落ちこんだ時、困ったときに相談を出来たり支えてくれる人は誰か

・誰に結果を話すべきか、相手がどのような反応をするか

 

質疑応答の時間を頂きましたのでご紹介させて頂きます。

 

Q:味噌汁を多くとることで再発リスクを低減させることは出来るか?

A:あくまでも、乳がん発症のリスクを抑制する効果というデータであり、治療中のケースについては不明。

 

Q:乳製品の摂取は乳がん発症のリスクを高めるという噂を聞くが・・・

A:そちらについてもエビデンスは無く、不明。

 

Q:卵巣を切除することは乳がんの発症リスクを抑制する効果があるか?

A:現在はエストロゲンを抑える薬品があるが、薬品が無かった時代は卵巣を切除していた。

  そのことからも、卵巣をとることは抑制効果があるといえる。

 

このように、遺伝の総論からがんと遺伝の関連性、そして乳がんの現状から遺伝子検査の概要に至るまで幅広くお話頂きました。

 

今回のテーマは専門的でどちらかと言うと、普段あまり馴染みの無い分野でしたが、医学的な用語が多い中で、私たち患者にも解りやすいように講演して下さいました。

駒込病院でも遺伝子検査の導入は2011年ということで、まだ新しい分野です。

そして日本ではまだ保険適応外ということもあり、費用の面でも現時点ではなかなかハードルが高いのが現状です。

しかし、今回勉強会に参加し、遺伝子とがんの発症の関係性や遺伝子検査の必要性について学べたこと、そして検査を受ける際のメリット・デメリットも提示頂いたことで、遺伝子検査を少し身近に感じることが出来たように思います。

また、遺伝子検査について考えることは、家族、もっと言えば先祖そして自分のルーツを知る良い機会にもなるのかもしれません。

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