第28回こまねっと勉強会「乳房再建 2018 update partⅡ」
朝晩冷え込む季節になってまいりました。
皆様如何お過ごしでしょうか?
10月20日(土)毎年恒例のこまねっと勉強会が開催されました。
第28回目となる今回は、形成再建外科の谷口浩一郎先生に「乳房再建」のご講演を頂きました。
当日の講演内容について概略をまとめさせて頂きました。
素人書記なので、少々不足や読みにくい点があるかもしれませんが、お許し下さい。
<はじめに>
まずは、駒込病院での乳房再建の歴史についてお話頂きました。
駒込病院の乳房再建の歴史は古く、坂東正士医師により日本で初めて「インプラント」を使用した再建手術を実施した病院だそうです。
Wikipedia(ウィキペディア)で乳房再建を検索すると駒込病院と坂東正士医師が出てきます。
駒込病院の形成外科の歴史と共に、谷口先生の若かりし頃のお写真も登場し、コミカルな雰囲気も交えながら始まりました。
形成外科の仕事は乳房再建以外にも、ケガ、火傷、先天性の治療、皮膚移植、美容外科の分野まで多岐に渡っています。
ちなみに谷口先生が形成外科医になったきっかけは、手術への強い関心だったそうです。また、マンガを読むのが趣味の一つで「ブラックジャック」がお好きとのことで、ブラックジャックは形成外科医ではないかと先生は分析しているようです(笑)
<乳房再建について>
本題の乳房再建については、駒込病院乳癌治療チームの思いや、乳房再建関連の用語、駒込病院で出来る再建方法、そして駒込病院の再建治療成績のお話し頂きました。
以前は、形成外科は治療のオプション的な考えでしたが、現在は治療の一環として意識されており、前出の坂東正士医師は「形成外科=心療外科」と唱えています。
術式の選択についても、現在は患者が選択をする時代になっており、方法や時期についても選択肢があります。(再建時期、再建術の回数を基準)
一次再建(同時再建)
二次再建(全摘後に改めて再建をする)
一期再建(拡張期(エキスパンダー)を使用しない。)
二期再建(拡張期(エキスパンダー)を使用する。)
乳房再建について駒込病院では、乳がんのステージやサブタイプによる制限は設けていませんが、喫煙者の方は是非禁煙を実行して欲しい。喫煙により血液の廻りが悪くなり、合併症を引き起こすリスクが高くなるそうです。
また、二次再建については、放射線治療を経由する場合は、ある程度時間を置いた方が良いとのことです。
駒込病院の治療成績については、他よりも好成績を修めていますが、現状に満足せずに0%を目指すことを念頭に置いているそうです。
例:インプラントによる感染:一次再建 全体1.9%、駒込病院0.7%
<最新の技術>
その中で「脂肪注入」による再建は理想的なイメージがありますが、脂肪の組織の形状により、中心部のみ壊死をしてしまうリスクがあり、難易度が高い術式のようです。
そのような事情により、血液の廻りの良い所に注入するなど生着しやすい注入方法を行う必要があるが、それでも少しずつしか生着しない(生着しないと体内に吸収されてしまう)、感染のリスクある、そして自費診療による負担といったデメリットがあるのが現状です。
<再建後の長期経過>
自家組織と異なり、インプラントについては人工物(異物)を体内に入れているという点で一生メンテナンスが必要になります。
状況により修正、入れ替えの必要がありますが、これまでの症例をもとに体重増減による健側とのバランスの乖離や、皮膜拘縮等の実例についてもお話がありました。
良い例だけでなく、症例に基づいたリスクについてもお話を聞ける機会は希少なので、今後再建手術を検討している方にとっても大変参考になるお話でした。
<知っておいて欲しいこと>
・インプラントに入れ替え前のエキスパンダーが入っている間、MRIは禁止。エキスパンダーは金属を含んでいる為。
・インプラント関連リンパ腫
・インプラントは人工物の為、再建後は一生通院によるメンテナンスが必要
<トピックス>
・脂肪注入による治療は2015年より自費診療で可能
・健側の豊胸は2018年より自費診療で可能
・リスク低減乳房切除は現状対応不可。海外の有名な女優が遺伝子検査の結果により、予防切除をしたことで注目されている。
・リンパ浮腫治療は対応可能
<今後の展望>
・脂肪注入の保険適応は2年後以降の見込み(今回、保険適応見送りになってしまい、一旦見送られると2年間は議題に出ない為)
・脂肪注入による全乳房再建が可能になれば、手術の際の傷も最小限に抑えられる
・薬物療法による手術療法の省略(ゆくゆくは乳がんが無くなる?!)
↓
遺伝子検査の発達により予防切除でのリスク回避が可能
↓
薬品治癒が可能になれば手術が不要になる
↓
薬品で予防が可能になる
以上、当日の講義内容をまとめさせて頂きました。
今回、乳房再建手術の歴史から現在の治療、そして今後の展望まで幅広くお話しをうかがうことが出来ました。
今後の展望のお話の中で、薬品で乳がんの治癒や予防が可能になれば、乳房再建の仕事が無くなってしまうのか?とコメントされていましたが、近い将来そこまで治療方法が発達することを患者の一人として切に願います。
以前著名な戦場カメラマンの方が「戦争が無くなって、戦場カメラマンの仕事が無くなる(戦争の無い平和な世の中になる)のが僕の夢です。」とテレビ番組でコメントしていたのを思い出し、谷口先生も乳がんの治療への思いとしては同じなのではないかと感じました。
今回の勉強会にご参加出来なかった方にも、少しでも当日の雰囲気が伝わりましたら幸いです。
なお、勉強会で回収させて頂いたアンケートについては、まとめまして別途ご報告をさせて頂きます。
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