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2010-07-24

NAF研究のご紹介(有賀智之先生より)

NAF研究のご紹介

はじめに

乳癌の罹患数は年々増加傾向にあり、現在日本人女性の約20人に1人が乳癌に罹患しています。また2020年までの本邦における乳癌罹患率推計では201045600名、201548500名、202050200名と著しい増加が予測され1)、その早期診断、発生予防は急務となっています。触診法のみによる乳癌検診に死亡率減少効果がないと報告された2)2001年以降マンモグラフィーと触視診を併用した乳癌検診が多くの自治体で施行されていますが、乳腺量の多い40歳代に対する検診による死亡減少効果に関してはいまだ議論の余地が多いところです。本邦における乳癌のピークが40代にあることを考えてみてもこの年代に対する有効なスクリーニング法の確立が重要と思われます。現在、一般診療で広く行われている超音波検査を検診に導入することを目的として、平成19年度厚生労働科学研究費補助金がん対策のための戦略研究「乳がん検診における超音波検査の有用性を検証するための比較試験:J-Start」が進行中ですが、その有用性に関しての結論はまだ出ておりません3)

NAFとは

 NAFとはNipple Aspiration Fluidの略であり乳頭を吸引して出現した分泌液のことです。乳房に何の異常もない人でも、乳房内にはほんの少量の分泌物が貯留しているため、乳房を温め、マッサージを行い、乳頭を吸引することでNAFが採取できるのです。

 多くの乳癌はこのNAFを分泌している乳管上皮細胞から発生することが知られておりNAFの中には乳癌の存在や、乳癌罹患の危険性を示す物質が含まれていることが期待されております。NAF自体は30年以上も前から海外で盛んに研究がおこなわれており、Sartorius4)の報告では3040代で7080%と多くの方から採取できることが示唆されております(図1)。我々の研究でも日本人の約50%の方から採取できることが分かってきました5)

NAF採取方法

① エコーの実施:NAFを採取する前に乳腺エコー検査を施行し、乳管拡張、嚢胞の有無、その他の異常所見の有無を確認します

② 乳房の加温:両側乳房を携帯カイロなどで加温します

③ 乳頭の清拭:乳頭の角化栓を除去する目的で乳頭をオリーブオイルにて清拭します

④ 乳房マッサージ:乳頭全般にジェルを塗布し、乳房の周辺より乳頭方向に向かってマッサージを入念におこないます

⑤ 乳頭吸引:吸引機を用いて乳頭を吸引し検体を採取します

NAF研究の問題点と今後

乳管上皮細胞より分泌されるNAFの中には同じく乳管上皮細胞より発生する乳癌に関する何らかの『あしあと』が隠されていると確信しておりますが、その『あしあと』と突き止め、確かな証拠として臨床に役立てるためには暫くの時間がかかると思われます。そのため御参加頂いた方に直接のメリットはあまりないかもしれません。

日本ではこのように参加者に直接のメリットが保証できず、参加者のボランティアに依存した臨床研究は人員確保(研究者、参加者)、研究費獲得などの面から継続が難しく、欧米諸国の様な大きなデータを出すのが難しい原因となっております。

しかし我々はこのNAF研究がいつしか乳癌の早期発見やリスク評価に必ず役立つと確信しております。

趣旨に御賛同いただいた方で、御参加頂ける方がいらっしゃいましたら何卒ご参加いただきたくお願い申し上げます。NAF採取は毎月一回(原則第二土曜日)に足立区竹ノ塚の大塚ブレストケアクリニック内で行っております。採取に時間がかかりますため、なるべく待ち時間の少なくなるよう予約制としております。

以下の連絡先にメールまたは電話で御参加の予約を頂けましたら幸いです。

大塚ブレストケアクリニック

東京都足立区竹の塚5-18-4 リバティ竹の塚2

TEL 03-5242-6200

mail info@breast-tsune.com

参考文献

1) 大野ゆう子他:日本のがん罹患の将来予測―ベイズ型ポワソン・コホートモデルによる解析に基づく2020年までの将来推計。がん・統計白書2004 篠原出版新社

2) 平成12年度厚生労働省保険事業推進費等補助金によるがん検診の適正化に関する調査研究 日本公衆衛生協会、2001

3) 大内憲明他:がん対策のための戦略研究―超音波による乳癌検診― 

  日本乳癌検診学会誌 17(1) MAR 2008

4) Sartorius OW et al  Cytologic evaluation of breast fluid in the detection of breast disease.  

  J Natl Cancer Inst 1977

5)  Aruga T et al  Nipple aspirate fluid in Japanese women

  WSEAS Trans Biol and Biomed 2010




































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